01  エレラルド海  空母「エクテシア」

 ――我々は一体何をして来たのか?

 表向きは平和であっても、時代の裏側の実状は違っていた。

 その事実を知らされた時は、ショックだった。
 そして、報復のために核を使用する事にも抵抗はある。ウィリーもきっとそうだと思う。

 2021年のラダン連邦の各国への核攻撃は、未だに強く記憶の中に残っている。
 先のバグラート戦争で、ディナル=モアでの戦いが敗色濃厚になったラダン連邦の軍部は暴走し、当時の連合国にICBMでの攻撃を行った。連合軍はクルス・オクタゴーノ、メサリナ本国のポース・オクタゴーノから必死に迎撃を行ったが、ラダン軍の妨害が激しく、バルディナ大陸南部の国々とルージアのレイローグを含む諸都市が被爆し、壊滅した。
 その当時の映像は今でも目に焼きついている。人が住んでいる都市が光に飲み込まれ、そこにあったものはすべて消えていくのだ。

 ――あの光景を、あの光を見たから国は、人は核兵器を捨てようと考えたのではなかったのか。

 2度と見たくはなかった光。使われてはいけない光。
 そのはずだった。
 だが、ルージアは再びその光を使ってしまった。

 そして、自分たちは今、その光を敵に向かって放つ事を迫られている。
 クルス・オクタゴーノを失った今、連合軍はさらに苦しい状況に陥った。IRBMによる攻撃の脅威に晒される事となったヴェリネ島北部を完全に放棄し、ディナル=モア奪還の橋頭堡を失った。メサリナ本土のポース・オクタゴーノの超大型レールガンが守る安全圏の西端がイニア島である。 そのため、連合軍艦隊もその行動を大きく制限される形となった。
 ティオニアの核兵器がルージアの手に落ちたままでは危険である。前大戦の惨状が再現されかねない。反攻を急がなければならなかったが、そのためには連合軍に新しい抑止力が必要だった。
 核には核という抑止力が。そして、それを成立させるための報復も……



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