03  フィルド共和国北部シュテイル市  メサリナ難民キャンプ

 ――ティオニア地方。

 旧来からルージアの利権が強かったこの地方は、かつては同国の信託統治領だった。しかし、ウラン鉱発見をきっかけにバルディナ各国はフィルド共和国に介入し、国際保護区とさせてしまう。
 国際保護区となって、世界中から様々な頭脳が集まり、核エネルギーの研究に始まり、さらにその他様々な分野の研究所が立ち並ぶ大研究都市となったのは表向きの話。実際はバルディナ各国が資源の利権を確保し始め、それがルージアとの対立の原因となっていった。
 さらに、この地方は貴重な核エネルギー資源を産出するだけに留まらない。前大戦でラダン連邦が生産した数百発の核弾頭が貯蔵されているのだ。先の大戦後から暫定的に封印されて来たこれらは、毎年少しずつ国際管理のもとで毎年少量ずつ解体されていた。
 それが、ただ一国の手に落ちた。
 それが一体何を意味するのか。
 いつ、どこの土地が焼き払われるかわからない。実際に、人は前の戦争でそれを使ってしまっている……
 ルージア連邦に宣戦布告された国々は連合し、一刻も早く、敵に奪われた国際保護区を奪還を行うという。

 安全な場所などどこにもない。そして、この戦争で自分のような更なる犠牲者を出したくはなかった。
 しかし、本当はただの研究者でいたかった。軍に協力するという事は、戦争に加担するという事だ。もし、夫が生きていれば、娘が言葉を失っていなかったならば、私を止めてくれただろうか……
 だが、隣に夫はおらず、隣にいる娘は私の問いかけに答えてはくれない。



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